世界陸上観戦記

陸上競技部OB会 松本里砂(11期生)

 とうとう8/23が来た。

 朝は外も涼しくてさわやか。これが一日続いてほしい・・・。 前日午後4時の町の交差点の温度表示は46℃だった。今日もきっとそれくらい暑くなるのだろう。午後5時。何が起こるか分からないので早めにスタジアムへ向けて出発。バスを2本乗り継ぐ。チケットを前日に引き替えておいたので炎天下の長蛇の列を横目に入り口へ(スペインの人たちはかなり辛抱強いと思われる)。

 プログラムと飲み物を買って席に座るとちょうど三段跳びが始まっていた。スタジアムのスクリーンには「スクランブル交差点を3歩で渡る男(byTBS)」ジョナサン・エドワーズ。あれ?プログラムに名前がない。このプログラム不良品かな。まだ陽が高いので三段跳びが行われているバックストレートはぎらぎらしてとても暑そうだ。ハードルは日陰で良かった。

 110mHのハードルとスターティングブロック(*1)の準備が始まる。男子のハードルは1mちょっとの高さがあってかなり重い。競技役員の数って多いなあ〜といつも思っていたが,この暑さでは大勢でハードルを運ばないと時間通りに終わりそうにない。プログラムには一次予選は5組しか載っていないが,スクリーンに1組目の選手の紹介と1of6という表示が出た。6組中第1組という意味だから,第6組の選手はプログラムに名前や持ちタイムが載っていないらしい。この不備のプログラムによると谷川くんは第4組,同じく日本代表の桜井くんは第2組。優勝候補のアレン・ジョンソンとコリン・ジャクソンとは組が違うので一応ラッキー。

 第1組の選手たちがスタブロを調整してスタート練習を繰り返す。午後7時。日本で午後4時くらいの明るさ。まだまだやたら暑い。第1組がスタート。やはり国際大会はすごい。人間とは思えないスピードのハードリングで目の前を走り過ぎていく。トップは13″4台。タイムももちろん国際レベルだ。

 第2組桜井くん登場。表情を見る限り気後れはしていない様子。二次予選は4組で行われるはずだから,各組4着までとタイム順でプラス8人だろうか?(今一つ詳しい放送がない)。しかし第2組の選手たちも速く,桜井くんは二次予選には進めなかったようだ。そして第3組のタイムは更に速い。

 第4組。プログラム通り谷川くんが出てきた。余裕がありそうな,まさに先日本人が言っていた「海外遠征の一つと考えている」という表情。スタート練習を繰り返す。調子は良さそうだ。テレビカメラが1レーンから順に選手の表情を写していく。他の選手たちも余裕がありそうだ。そしてみんな強そうに見える。とうとうスタートの時間。がんばれ!!!

 谷川くんも他の選手に負けないスピードが出ている。すごい。ハードリングは完璧。ゴールは・・・4着!入った!来た!やった!次だ!!!

 第5組,第6組が終わって,総合順位がスクリーンに表示された。二次予選に進んだ32人のうち谷川くんは25番目。準決勝に進む16人に入るには,8/15に出したばかりの日本記録をもう少し上回らなければならない。気温は暑いが風はない。気象条件は他の選手も一緒だ。あとは自分のコンディション。

 この後いろいろな競技が始まったが,どうやら観客はスペイン代表の選手がスタジアムに出てくるだけで大興奮で,太鼓や笛は鳴るわ,役員ユニフォームの団体がウェーブしちゃうわ,混乱状態。スタートができずに何度も選手が立ち上がる。これが競技時間が遅れている原因か。そういえば91年の東京大会でもスタート前にウェーブが起きて大変だったっけ。

 400mや3000mSC(*2)を観ながら待つこと約1時間半。午後9時半を過ぎて110mHの二次予選の時間が来た。やっと再びハードルの準備が始まる。観ている方は「やっと」だが,選手は懸命に調整しなければならないのだろう。1組8人のうち4着に入れば明日の準決勝に進める。5着以下ならそれで終わり。気温はまだ暑い。

 谷川くんはさっそく第1組。一次予選と同じような表情。まっすぐゴールを見据えてスタート練習。時間が迫り,選手たちが次々とユニフォームになる。ジャージやTシャツを入れたカゴが選手の後ろから運び出される。選手たちは思い思いにジャンプしたり,体をたたいたり伸ばしたり。一次予選と同じようにテレビカメラが一人ずつ表情を写していく。

 「位置について(スペイン語)」それぞれが自分のやり方でスタブロに足をかけて手の位置を決める。ゴールやハードルを見つめる選手もいれば,全く見ない選手も。「用意(スペイン語)」全員がスタートの体勢になった。そして号砲!

 一次予選より更に迫力がある。あっと言う間にすぐそこまで来ている。トップとどのくらい差が付いているだろうか。そして順位は・・・・。それぞれの選手が力を出しきっているようだ。体を前傾してゴール。谷川くんは惜しくも6着。各組4着までが準決勝だと思って観ていたけど,本当は3着+4だったりして???そんなことないかな。本人も順位が気になるのかタイムが気になるのか,待ちかまえるインタビュアーがイヤなのか(?)ゴール付近でスクリーンでのリプレイを待つ。順位はやはり6着。しかしベストに近いタイムが出た。このタイムで6着か・・・・残念。

 でもいい走りだったと思うし,谷川くんにとってはこの世界陸上に出場することが目的だったのではない。これからもきっと自分で掲げる大きな目標に向かって,トレーニングを重ねていってくれるだろう。全力で走っていてくれる限り、大声援で応援していきたい。

*1 スターティングブロック
*2 3000mSC