第57回 全国高等学校PTA連合会大会 埼玉大会



  第57回全国高等学校PTA連合会埼玉大会は、埼玉スーパーアリーナに11000人を迎え、「夢 希望 彩り豊かに輝く明日を創造する力」を大会テーマに開幕しました。さいたま市立浦和中学校・高等学校吹奏楽部による演奏の流れる中、参加来賓の着席、大会実行委員長、全国P連会長式辞に続き、来賓祝辞のほか、「彩り豊かに世界を駆ける力―若者へのメッセージ」というテーマでNHKエクゼクティブアナウンサー堀尾正明氏による記念講演が行われました。又、高校生の発表として、埼玉県内の4団体による舞台競演も大きな拍手をさそいました。
  会場の埼玉スーパーアリーナの一画には、各県の代表の広報誌が展示され、我が八王子東高校の広報誌「志邏伽之」108号も、東京都代表の国立高校、国分寺高校と共に、展示されました。
  2日目は、4分科会での事例発表・研究協議に加え、3特別分科会では、現代の課題を3つ取り上げ、基調講演とパネルディスカッションが、埼玉県各会場においておこなわれ、活発な質疑応答もおこなわれました。
  八王子東高校PTAは大会1日目は 広報委員・本部の5名で参加。2日目は第1分科会と、特別第3分科会に分かれて参加いたしました。尚、埼玉大会の参加内容詳細につきましては、八王子東高校ホームページに掲載させていただきます。また、大会全体の詳細につきましては、PTA会室に埼玉大会実行委員会編集の大会要項を備え付けましたので、PTA事務経由でご覧ください。

【日 程】
  8月24日(金) 大会第1日目 全体会 埼玉スーパーアリーナ
    高校生によるアトラクション
    開会式  表彰式
    高校生による発表
      管弦楽  バレエ  秩父屋台囃子  応援団演武
    記念講演
     「彩り豊かに世界を駆ける力」 NHKエグゼクティブアナウンサー 堀尾正明氏
    安全講話
      国立淡路青少年交流の家所長  戸田芳雄氏
    3ない運動宣言
    次期開催県挨拶   
  8月25日(土) 大会第2日目 分科会・特別分科会
    第1分科会   大宮ソニックシティ
     高校教育とPTA   子どもたちが夢や希望を語れる学校づくりとPTA活動
    第2分科会   川口総合文化センターリリア
     進路指導とPTA   子どもの自立を支援する進路指導
    第3分科会   埼玉会館
     生徒指導とPTA   生徒・家庭・地域の役割と連携について 
    第4分科会   さいたま市文化センター
     家庭教育とPTA   親として学ぶこと、考えるべきこと
    特別第1分科会 上尾市文化センター
     国際社会で求められる人間力の育成とPTAのあり方
      〜彩り豊かに笑顔で世界を駈け抜けるために〜
    特別第2分科会 草加市文化会館
     環境教育の推進とPTAの役割
      〜輝く未来のために地球にやさしい生き方を探る〜
    特別第3分科会 さいたま市民会館おおみや
     情報社会の進展とPTAの役割
      〜情報社会の中でモラルやマナーを育てる家庭における情報モラル教育〜


大会第1日目 8月24日(金) 全体会(埼玉スーパーアリーナ)
参加者:青柳・多田・古友・原・斉藤

◇ 記念講演『彩り豊かに世界を駆ける力―若者へのメッセージ 』
  講演者 NHKエクゼクティブアナウンサー:堀尾 正明氏

  • 私はNHKに入社以来アナウンサー一筋でやっていますが、入社したての頃は日本語の使い方に敏感にならざるを得ませんでした。季語の使い方が違う、商品名を出してはいけない、しゃべるのが怖くなったくらいです。そして今、日本語が乱れていると言われているのを聞きますが、日本語の乱れは包容力のある、豊かさが日本語にあると言うことだと思います。日本人は非常に多くの外来語を使いますがその外来語は日本語の訳語とは違ったニュアンスを持って使用されます。外来語を取り入れることによって日本語は豊かになっていると言うことです。文法の間違った言葉は使用してはいけないと指摘する人もいますが、言葉はいきものです。時代と共に変わるのを誰も止められません。私はむしろ寛容であってほしいと思います。
  • 私の担当している「ご近所の底力」は番組放映150回を越え、この番組が起爆剤となって、各地で様々な地域興しの運動が立ち上がったと聞いております。公権力に頼らずに、自分達の力だけで身近な問題を解決していこうと、新しい形の近所づきあい、地域の力が形成されてきました。
  • この番組を司会していて驚いたのは住民パワーの大きさです。そのパワーで地域の力を再生し、若者達を地域の中で育てていって欲しいと思います。若者の中には規則を犯してしまう型破りな子供もいるかもしれません。しかし規則は人間が作ったものです。規則を盾にそれを破る者を排除してしまうのではなく、何故規則を破ったのか、理由やその気持ちを理解してあげて欲しいのです。若い頃は一線を踏み越えたが、ひとかどの人物になった例を私は多く知っております。若者に寛容であって欲しいと思います。

◇ 安全講話 「生きる力をはぐくむ安全教育」
  国立淡路青少年交流の家所長:戸田 芳雄氏
  • 高校生の死因のトップは他の年代と違い、男子では交通事故で、女子では自殺と交通事故がほぼ同じくらいの割合です。
  • 自動二輪での事故は減りましたが、その代わり、自動車に同乗しての事故、自転車の事故が増えています。学校内での事故は全体の2%なので地域での事故をいかに防ぐかが重要です。割合でも幼児は少なく小学生より中学生が、中学生より高校生が2〜3倍くらいの割合で事件に巻き込まれています。中・高校生なら未然に事故に遭わないように教育することが出来ます。これが「生きる力」と言われるものです。
  • 少ないとはいえ学校内での事件、事故を防ぐことも重要です。平成13年に幼、小、中、高校に安全マニュアルを配布しました。その中には転落などの生活事故から不法侵入、災害被害への対応までも含まれています。
  • 最近でてきた情報犯罪、携帯を媒介にした犯罪、これはご家庭の方で携帯にフィルタリングを掛けてあげて下さい、性教育、エイズ教育なども事件に遭わないようにするために必要ですが、ただ教育するだけではなく社会や家庭での温かい人間関係が失われたことにも原因があるようです。PTAでの取り組みをお願いいたします。
  • 子供の生きる力を育むこと、安全文化を創造することが大事です。健康で体力があり、道徳心があること、心を耕す教育が必要とされています。

大会第2日目 8月25日(土) 第1分科会(大宮ソニックシティ)
参加者:日野出・川野邊

◇ 『子どもたちが夢や希望を語れる学校づくりとPTA活動』

【事例発表】
  1. 山梨県立富士吉田高等学校PTA
    富士山学、ボランティアパスポートの単位認定制度など特色ある学校へのサポート活動
    1. 総会後に研修としての講演会
      子どもとの関係、家庭での問題についてなど
    2. 学園祭でのバザー
      生徒の希望に沿った物品購入(カンボジアへの本棚寄贈、生徒会の製氷機の購入)
    3. 富士登山強歩大会への協力
    4. 制服リサイクル活動
  2. 石川県立金沢二水高等学校PTA
    県下で一番行事の多い学校への行事支援
    1. 二水アクト 生徒たちの金沢市内のゴミ収集後 めった汁と麦茶のサービス
    2. 二水祭でのめった汁の店 「おっかさん」の運営
    3. PTA総会でのエアコン導入決議 電気代積み立て、負担
  3. 岐阜県立関高等学校PTA
    進路支援、文化広報、保健体育の委員任期は3年間、役員の任期は1年
    1. PTフォーラム  全体会講演会  学年分散会
    2. PTA進路見学会  京都と名古屋の大学を交互に見学
    3. PTAによる春、秋の交通指導  18地区で3〜6日ずつ 延べ600名の保護者
    4. 文化祭での保護者、先生、生徒の三者対抗のディベート大会
      文化祭での喫茶室開催 保護者、先生の生演奏 生徒への語りかけ
  4. 大分県立三重農業高等学校PTA
    来年3月で廃校決定、現在3年生2学科67名在籍 同じ敷地内に新しい総合高校が共存して、施設を共有。いかに子どもたちに充実した学校生活を送らせるか
    1. 会員78名中PTA役員39名でPTA組織の強化を図る
    2. 役員を中心とした太鼓チームの結成 「一生懸命な姿を子どもにみせよう、やれば出来る事を伝えよう」  文化祭での発表、先生も参加
    3. 専門部に担当行事を振り分け実行責任を持たせる。
    4. 顧問部は生徒にお化けかぼちゃの種を配布。狙いは「小さな種から大きな希望の実を育てよう」 文化祭では、お化けかぼちゃコンテストも企画。
    5. オリジナルポロシャツ作成、ロゴの三角形は頂点の生徒を先生と保護者が支えるの図案化。生徒に無償配布、先生、保護者は個人負担にて着用。

【助言者から】
  昨今、他者を信頼する関係が薄くなってきて、人と人との連携が難しくなってきている。その原因として、@ お金でサービスを買う 事で人が真心や善意で繋がる関係が少なくなってきている。 A自己中心的で他者の事を考えない。 B個人や家庭を超えて繋がり、地縁、血縁関係が薄れている等が考えられる。子どもは保護者だけでも、学校だけでも育っていくのではない。家庭では個人、学校では集団の生活で子どもが見せる顔が違う事がある。だからこそ両方を知ることが必要であり、また、大人同士が支えあう姿を子どもにみせる事で、子どもたちは信頼する事を学ぶ事が出来る。教育の専門家の教師と、子育ての専門家の保護者が互いに支えあう事はとても大切な事である。

  子ども達が社会に出て、苦しくても生き抜いていく為に、
    @人と繋がる、認められる、必要とされているという「関係」 
    A夢や希望、過去―現在―未来  と繋がる中で考えるという「時間」
    B他人に流されず、自分の力で自己を決定するという「自立」
  この3つの視点を子ども達に植え付けて伸ばしていく事が大切である。


大会第2日目 8月25日  第3分科会(さいたま市民会館おおみや)
参加者:青柳・金

◇ 『情報社会の発展とPTAの役割 情報社会の中でモラルや
  マナーを育てる家庭における情報モラル教育』

  基調講演 新保史生氏(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科准教授)

  【提言の趣旨】
    ネットワーク社会における学校・家庭における個人情報の保護
    (子どもと教師・親との間の情報格差を意識して)

  情報化社会の進展は、恩恵と弊害が表裏一体になっています。便利になった一方、情報入手の機会と量があふれていて、重要な情報が見えにくくなっています。またブログで自分の情報を無防備にさらしたり、他人を攻撃したりという発信する当事者になることから生じるさまざまな弊害も起こっています。ブログ・プロフ・掲示板・ファイル交換・チヤット・WIKI・MIXIなど言葉は知っていても実態を知らない、子どもの携帯電話の通信料金は把握していても、その利用実態は把握していない、インターネットは利用させているが、閲覧しているサイトやサービスを知らないという方は多いのではないでしょうか。子どもと教える側の情報格差で、指導する側が変化についていけず、状況把握が困難な為子供になめられることもあります。しかし、新しいということに振り回されない、とまどわないで本質を見て指導してほしいです。また、子供は親がすることを見ています。違法にソフトをコピーしないなど親自身が自分を律した法令順守意識が必要です。親が管理すべきパスワードの設定の甘さで個人情報漏えいやアダルトサイトへの接続などの問題も生じています。相談窓口は「インターネットホットラインセンター」「インターネット安心安全相談」へ。
  学校における個人情報の保護は不必要な事をやっている現状があります。緊急連絡網を作れない、顔写真つきの名簿が作れないなどの過剰反応が多くおきています。情報を教師間や保護者との間で共有しないなど、情報の扱いに対する萎縮効果が顕著になっています。その一方で、児童保護者の個人情報は個人のパソコンに保存されていたり、紛失しやすいUSBメモリスティックに保存されている現状があるなど、個人情報「保護」という言葉にまどわされて、本来、対応すべき「保護」とは異なる対応が散見されます。個人情報保護制度は、原則は個人の同意が必要ですが、人の生命身体財産保護や児童の健全育成のためには必ずしも同意が必要ではありません。児童の健全育成のためなら、学校とPTAとの情報共有も問題はないのです。「利用と保護のバランス」をとる必要があるのです。 

パネルディスカッション
     司会進行・・久木健志氏 (深谷市教育委員会副参事兼学校教育課長)
     パネラー・・新保史生氏・池田康文氏(教育新聞社編集局次長兼編集部長)・
     本郷健氏(大妻女子大学社会情報学部社会情報学科教授)・
     家近早苗氏(聖徳大学人文学部児童学科講師)
     (パネラーそれぞれの立場で情報化社会の現状と親やPTAの役割を提案されました。)

パネルディスカッション詳細
新保 携帯電話の使用に当たってはルール(携帯電話不正利用防止法)・モラル(親に迷惑をかけない)マナー(電車の中で大声で話さない)を家庭でどう対応するかが大切。インターネットの法的規制が追いついていないとよく言われるが、新しい事に対する法律(ブレーキ)は事前規制があってはならない。人間社会はコミュニケーションによって成り立っている。その手段としてIT技術を使っているに過ぎない。まだ、たったの10年なので未整備で当たり前。信号のない道路を歩いているのと同じなので整備されていない部分は利用者が気をつけることが必要である。今後技術的にも少しずつ出来上がってくるので、今はルールとマナーで少しずつ考えていく必要がある。日本では携帯会社にフィルタリングを努力義務にする事を検討中。
 
池田 子どもたちは心配や悩み事があっても半数はがまんし、あきらめているので、ネットをはけ口にしているのではと考えられる。匿名性が支配するネット上でいかに人間的に振舞えるかが大事。家庭では人間として何が大事か具体的な材料(例:災害基金を語った詐欺VSネット上の呼びかけでボランティアが集まった事)で話し合うことが大切。 ヒューマン・ビーイングではなく ビーイング・ヒューマンでありたい。「推論する。」という作業は情緒を育ててくれる。例えば、「動物の世話をする。」・「植物の世話をする。」・「どちらの世話もしない。」 の実験では、植物の世話をした子供が情緒的に好ましい結果を出している。植物は世話をしても即反応しないから、状態を常に観察しなければいけない。そこに「推測してあげる。」という気持ちが必要となり、相手への思いやりが生まれてくる。ユビキタス時代のPTAの理念は「学びあう生涯学習の場」今もうひとつのPTAがある。Participation(参加)・Perspective(みとうし)Totality(全体性) Autonomy (自律性)
 
家近 子どもたちはコミュニケーションをとりたがっているがメールのやり取りで眠れない、ホームページで傷つく、誰が自分のサイトにアクセスしているか確認してショックを受けるなど問題を抱えている。相談にくる学生には直接対話することで、ひとつひとつ教えている。親は子どもがどんなものを見ているかアクセスしてみるのもいい。「駄目なものは絶対駄目」と伝えることが大切。ネット上で何が起きているのか認識することからはじめよう。負の部分もあるが有効性もきちんと伝えよう。
 
本郷 メディアは個人の心の有様を拡大するツール。情報モラルの育成に必要な自己規制・自己統制が健全に発達するには知識・心(大切にされていると感じている人は、他人も大切に出来る)・考える技術(批判的にものをみる=クリティカルシンキング、推論する力)が必要。高校生は親や学校の価値観や思いを敏感に感じている。携帯に関しては、家庭が第一責任者であり学校のコントロール外である。

【感 想】
  未整備な情報化社会にさらされている子どもたちに親として必要な事は当たり前のモラルを教えること、愛されているという安心感を与える事、そして何よりも大切なのは親が後ろ姿で規範を示す事だと感じました。わからないことに戸惑ったり過剰反応することなく、子どもたちと一緒に考えていくことが大切。ユビキタス時代のPTAの理念は「学びあう生涯学習の場」という提言がありましたが、大人である私たちがバランス感覚を持って子どもたちの手本となれるように活動していきたいと思います。